わたしと「昔ながら」。

MY SHIOKARA
STORY Vol.9

「⻘唐⾟⼦⼊りの塩⾟は、
たまたまできたんです」

宮城県気仙沼市
波座物産 相談役 ⼤原富夫

ピリッとした⾟味がクセになる「昔ながらの濃厚熟成塩⾟(⻘唐⾟⼦⼊り)」は、今や売り切れるほどの⼈気商品となりました。このユニークな塩⾟はどのようにして⽣まれたのか?⽣みの親である⼤原富夫さんに誕⽣秘話を伺いました。

お客様の⾔葉をヒントに、
⼯場にあった⻘唐⾟⼦で試作。

⻘唐⾟⼦⼊りの「昔ながらの濃厚熟成塩⾟」ができたのは本当に、たまたまなんです。
もう20年以上も前の話ですが、「昔ながらの濃厚熟成塩⾟」を売ってくれていた店のお客様が「⾟味をつけた塩⾟も美味しいよ」と⾔っていたという話を聞いたんです。じゃあ試しに作ってみようと思って。
何の試作のために⽤意してあったのかは忘れてしまいましたが、その時たまたま⼯場に⻘唐⾟⼦の塩漬けが買ってあったんです。とりあえず、これで試しに作ってみようと思って、刻んで⼊れて作ってみたんです。そうしたら美味しかったんです。
だから、⻘唐⾟⼦⼊りの塩⾟ができたのは、たまたまなんです(笑)。こんなに⼈気が出るとは思いもしませんでした。

販売店も気に⼊ってくれて、
「昔ながら」の姉妹品として発売。

「昔ながら」を売ってくれていた店の店⻑さんに味⾒をしてもらったら、すごく気に⼊ってくれて、「これをお茶漬けにすると最⾼だよ」と⾔ってくれて。「とにかく⼀回売ってみよう」という話になりました。
店頭に並べてみるとお客様の反応も上々で、けっこう売れました。
ただ当時は、元となる「昔ながらの濃厚熟成塩⾟」の味が完成する前のことで、作り⽅をまだ模索している最中でした。

惜しまれながら販売を休⽌。
忘れ去られ、「幻の塩⾟」に。

「昔ながらの濃厚熟成塩⾟」は美味しさが評価されて、発売から数年後の1997年に第23回⽔産加⼯品評会で「⽔産庁⻑官賞」をいただいてしまいました。それでも、まだ作り⽅は模索中で、味が安定しなかったんです。
後に、樽ごとの塩⾟をブレンドして仕込むなどの改良を⾏って、味を安定させられるようになったのですが、その頃はとにかく「昔ながら」の味を安定させることを優先しようと決めて、「⻘唐⾟⼦⼊り」の販売は休⽌したんです。結局、今の「昔ながら」の味が完成するまでに7年かかりました。
その後は震災もあり、私⾃⾝も数年前に現場を離れましたので、⻘唐⾟⼦⼊りの塩⾟は忘れられた存在となっていました。

2022年に、改良して復活。
売り切れるほどの⼈気に。

波座・朝⽥:コロナ禍で動きづらかった期間に、私は新商品の開発をずっと考えていました。その中で思い出したのが、⻘唐⾟⼦⼊りの「昔ながら」でした。
ただ当時の開発に私は関わっておらず、どんな味だったのかも知りませんでした。それで⼤原さんにお願いして、当時のレシピで再現してもらったんです。そうしたら、すごく美味しいんですよ。こんな塩⾟、⾷べたことがない!と思って。
復活させたいと考え、⼤原さんのレシピを元に、彼の息⼦でもある現⼯場⻑の⼤原浩司と⼀緒に作り上げたのが、現在の「昔ながらの濃厚熟成塩⾟(⻘唐⾟⼦⼊り)」です。

試⾏錯誤の末、原点である
塩漬けの⻘唐⾟⼦を採⽤。

当時の試作段階では、粉末の唐⾟⼦を⼊れた塩⾟も作りました。美味しいと⾔えば美味しいんですけど、やっぱり⻘唐⾟⼦らしい⾹りには⽋けるんです。刻んだ唐⾟⼦の⻭ざわりも感じられるほうが良いと思いました。
⽣の⻘唐⾟⼦はどうかと⾔うと、材料としての扱いに困るんです。仕込みに使わなかった残りの保存とか、⼊⼿のしやすさとか。結局、たまたま最初に使った塩漬けの⻘唐⾟⼦が⼀番良いことが分かりました。
塩漬けの⻘唐⾟⼦は常に市場にありますし、残った分も保管しておけます。塩抜きをする⼿間はかかりますが、塩漬けの⻘唐⾟⼦こそ最良の選択だったんです。

⻭ざわりも楽しめるように、
やや⼤きめに刻んで。

⻘唐⾟⼦は細かく刻んで⼊れたり、刻み⽅もいろいろ試したんですが、多少形が残っていたほうが⾒た⽬も美味しそうなので、輪切りにすることにしました。塩⾟と混ぜたり、タレになじんでいくうちに形は崩れてしまいますが、⻭ざわりは楽しめると思います。
⻘唐⾟⼦の量も何パターンも試作して、塩⾟の旨味やコクと⼀番調和する分量を探ってレシピを決めました。
現在の商品は、開発当時のレシピより若⼲⾟味が効くように調整したと聞いています。

「昔ながら」さえちゃんと作れば、
必ず美味しくなる。

でも結局⼤切なのは、元の塩⾟の味です。
「昔ながらの濃厚熟成塩⾟」⾃体をちゃんと作っていないと、⻘唐⾟⼦を⼊れても美味しくはないです。
⻘唐⾟⼦に味を付けているわけではないので、元の「昔ながら」さえきちんと作っていれば⼤丈夫。⻘唐⾟⼦を⼊れる量さえ間違えなければ、必ず美味しい塩⾟になります。
この間、抜き打ちテストじゃないですけど、「昔ながら」をお店で買ってきて味⾒しました。美味しかったです。安⼼しました。
⻘唐⾟⼦⼊りの「昔ながら」のほうは⾟味が効いているので、定番の「昔ながら」以上にお酒に合うと思います。

朝⽥:先⽇お会いしたお得意様も、皆さん⼝を揃えて「お酒に間違いなく合う!」と⾔ってくれて、うれしくなりました。
私⾃⾝この味をすごく気に⼊っていて、“酒の肴に合う究極の塩⾟”が⻘唐⾟⼦⼊りの「昔ながら」だと思っています。

それは、良かったです。私も、うれしいです。

取材を終えて。
波座・朝田慶太

作り上げてくれた「昔ながら」を⼤切に育てていきます。

⼤原さんの当時の話を聞いていると、いろいろアイデアが思い浮かびます。「昔、こんな塩⾟も作っていました」という話がどれも斬新で、すごくヒントになります。ワクワクしました。いくつか新商品としてトライしてみようと思います。楽しみにしていてください。「昔ながらの濃厚熟成塩⾟」は波座の看板商品です。⼤切にして、⼤きく育てていきます。今後とも、どうぞよろしくお願いします。

取材を終えて。